法中毒(薬毒物分析)


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 薬毒物と中毒

薬毒物 : 法律上の毒物,劇薬だけでなく,医薬品,工業用化学物質,農薬も含め生体機能に障害を引き起こす化学物質の総称。
中毒 : 薬毒物が体内に吸収されることで引き起こされる生体機能の障害をさし,その障害の結果,死亡する場合が「中毒死」である。




 法中毒(薬毒物分析)

法医解剖では薬毒物と死因との因果関係を解明するために,解剖所見とともに鑑定の対象として血液や尿などの体液,胃内容物,臓器中の微量な薬毒物の検出を行う。代表的な中毒には,家庭用燃料の不完全燃焼や火災時における一酸化炭素(CO)中毒が最も多く,次いで自殺手段に用いられる農薬や医薬品による中毒が挙げられる。また,死因と間接的な関わりをもつ飲酒のアルコール検出も行っている。



 当教室で用いられている主な薬毒物分析の種類

【 定量検査前の簡易薬物検査 】 

乱用薬物スクリーニング検査 (トライエージDOA)

この簡易検査は尿を用いて,検査時間10分で8項目の乱用薬物(コカイン系麻薬,覚醒剤,大麻,一部の向精神薬など)を同時に検出できるため,剖検中の判定に使用している。しかし,あくまでも簡易検査であり,薬物の正確な定性・定量のためには下記の精密機器分析を行う。





【 精密機器による薬毒物分析 】

ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)


ガスクロマトグラフ(GC)と質量分析計(MS)を結合させた装置であり,薬毒物をGCにより分離した後,各成分の質量をMSで測定して確実な同定を行う。ピークの高さにより含まれている量を求めることもできる。法医学の世界だけでなく食品分析や医療分野にも幅広く利用されている。
【 分析対象 】 有毒ガス(青酸,硫化水素),シンナー,乱用薬物(覚醒剤,麻薬,大麻)など




ガスクロマトグラフ(GC)の原理: 
薬毒物に高熱を加えて気化(ガス化)させた後,カラムと呼ばれる細長い管に送りこむ。この管の中には微小粒子が詰められており,この中を軽い(小さい)物質は速く,重い(大きい)物質は遅く移動する。その結果,複数の薬毒物が異なった場所に出現する。対照となる薬毒物との比較から同定を行う。アルコールや油類といった気化しやすい薬毒物の分析に用いられる。



液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)

液体クロマトグラフ(LC)と質量分析計(MS)を2台連結させた複合装置である。GC-MSでは分析が難しい熱に対して不安定な薬毒物,水に溶けやすい薬毒物の分析に威力を発揮する。GC-MSよりも広範囲の薬毒物スクリーニングが可能である。
【 分析対象 】 医薬品(睡眠薬、精神安定剤など),農薬など




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